1/1(火)の午後、新潟から東京に戻る高速バスの中で読んだ『しなやかな日本列島のつくりかた』で最も印象に残ったのは、スイスのツェルマットで25年以上、カリスマ的な観光事業者として活躍する、地域経営プランナー 山田桂一郎さんの言葉でした。

しなやかな日本列島のつくりかた』(藻谷浩介さん)


◆入込数
どこの地域でも、とにかく「入込数(宿泊・日帰りを区別しない単純な来訪者数)」を重要視するのが、とても不思議でした。
ヨーロッパの観光統計はすべて延べ宿泊数が基本なのですが、私がツェルマットを紹介するときに「年間二〇〇万泊です」と言うと、「で、トータルで何人来てるの?」と必ず聞かれる。
でも、その数を数えることにどれほどの意味があるのでしょう?

◆「異日常」性
ツェルマットのように住民が幸せそうに生活している場所は、訪れた人が「自分も住んでみたい」と感じ、何度も足を運びたくなる。
いわば、テーマパークのような一時的な「非日常」性ではなく、地域に根付いたライフスタイルの「異日常」性が最大の売りポイントです。

◆ブルガ-ゲマインデ
実はどの地域の協議会も、スイスの「ブルガーゲマインデ」という組織を日本流にアレンジしたものなんです。
ブルガーゲマインデはスイスのほぼすべての市町村にありますが、行政とは違う独自の住民組織で、強いて訳せば「住民地域経営共同体」くらいのニュアンスでしょうか。

◆教養主義
公用語が四つもあり、外国人が人口の五分の一もいるのに、直接民主制を機能しているのはなぜかとよく言われるんですが、しっかりと知性と教養を持ち、きちんとした判断ができる人たちが多いだけの話かなと思います。

◆最初に富裕層を相手にする
そもそも、A級品がないところにB級品は存在できないのに、いきなりBだけ作るから話がおかしくなるんです。
宿泊の食事も、まずはその地域で一番いいと言えるものを提供できるようにするべきです。
チープなものを作るのはその後でいい。
実際、スイスでは、まず地元のフラッグシップになりうる地域に合った最上級ホテル、例えば五つ星ホテルをつくり、次に他のカテゴリーのホテル、四つ星、三つ星…と広げていくことで、ラグジュアリーからカジュアルまでを取り込むことに成功してきました。
最初に富裕層を相手にすることでサービスの質も上がり、観光リゾート地としての全体的なレベルも向上するのです。

◆地消知産
地産地消というと、余りものや傷がついていたり、形が悪かったりして売れないものを地元で何とか使おうというニュアンスで使われることが多いですが、それではいい商品ができるはずがありません。
むしろ、地元産の良いものを地元の旅館やホテル、飲食店が直接、一円でも高く買うことが重要で、それをさらに手間暇かけて調理し、より付加価値を高くして売るということを考えるべきです。
しかも、それを都会の百貨店に置いてもらうんじゃなくて、地元にわざわざ来て、食べてもらう、買ってもらう。
地域に来て消費するだけの価値があるものをちゃんと産み育てましょう、という意味での「地消地産」です。

◆三つの「だけ」
お客様の側から見て求められるのは三つの「だけ」、「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」と提示されたものだけです。
これが揃っていないと、その地までわざわざ赴く必要性がなくなってしまう。
(中略)
地域性がある旬の食材を手間暇かけてハンペンにするというアイディアは、まさに「今だけ」「ここだけ」で、さらにお客様にとっては、「私だけのためのもの」という満足感も得られるのです。

年明けから背筋が伸びる一冊でした。

しなやかな日本列島のつくりかた』(藻谷浩介さん)